【着物のこと】

幼い頃からお正月やお祭りに着物を着せてもらっていました。

 

和裁の出来る母は、成人式の振袖も縫ってくれました。そんな着物大好きの私が、「着物がゴミに捨てられている」と知ったのは、40歳を過ぎてからのことでした。


着物には、着た人の思い出だけではありません。反物を織った人、染めた人、着物に仕立てた人、いろんな人の思いが詰まっています。しかも、昔は親から子へ、子から孫へと代々伝えられてきたものです。そんな着物が、ゴミに捨てられているなんて!私は、胸が痛くなる思いでした。

 

その頃、着物を着たこともない、お抹茶を飲んだこともない若者たちが海外留学に行って、日本文化について何も説明できなくて非常に恥ずかしい思いをしたという話も聞きました。

 

「このままでは、日本文化も日本の民族衣装である着物も忘れ去られてしまう」そんな危機感を持った私は、同じ思いを持つ仲間を集めて、NPO(特定非営利活動法人)を立ち上げました。

 

市民の皆さんから、不要になった着物を集めて、フリマで販売したり学校に寄付しました。また、着物の着付けとお抹茶の出前授業を、小中学校で行いました。寄付していただいた着物をクラス全員に着せて、正式なお抹茶の作法を見てから、自分で点てたお抹茶を飲む授業は、毎回大好評でした。

 

残念ながら、いろいろな事情でNPOは平成24年に解散しましたが、10年近く事務局長をしたことはとても良い経験でした。

 

毎日着物で過ごしたいというと、皆さんお金がかかって仕方がないと思われるでしょう。でも、ほんの数十年前までは、おばあちゃん達は毎日着物を着ていました。私の祖母たちも、ほとんど着物を着ていました。

 

着物って、体に巻きつけて紐で結ぶだけですから、太っても痩せても買い換える必要がありません。流行も殆どありませんし、帯や小物の色をちょっと変えるだけで、全く印象が変わります。

その上、着物として使用できなくなったら、ほどくと全て長方形の布になります。座布団になったり小物になったり、布としての天寿をまっとうすることもしやすい、非常にリサイクルに向いた衣服です。

 

ですから、着物って「究極のエコ衣装」だと私は思っています。

 

いつか、仕事も着物を着て飛び回れる日を夢見て、今日も頑張っています。