【詩吟のこと】

私が詩吟を始めたきっかけは、44歳の時に肺がんになったことです。

 

喫煙経験の全く無い私でしたが、人間ドックで肺に影が見つかり、右肺の3分の1を切除しました。

 

日常生活に支障はありませんが、肺機能が低下しています。

 

なにか肺を鍛えられて、その上高齢になっても続けられる趣味はないかと

探していました。

 

そんな時に出会ったのが「詩吟」です。

 

着物の関係で偶然知り合った方が詩吟の先生で、一度教室見学に来ませんかと誘われました。

ただ、それまで私が詩吟に描いていたイメージは

「お年寄りが大声でがなりたてるもの」。

 

恐る恐る見学に行くと、イメージとは全く違っていました。

50代から80代までの女性が、和気あいあいと楽しそうに詠っています。しかも、先生の詩吟は、教室の壁を震わすほど力強いのに、耳に心地良いのです。

 

さらに、ただみんなで詠うだけでなく、全国コンクールなどもあって、舞台に立つ機会も多いと聞きました。しかも、80歳近い方が、コンクールに出るために一生懸命に練習されている姿を見ました。聞けば、コンクールの前になると、先生のテープを聞きながらお家でも何度も練習をするそうです。当日緊張のあまり日頃の成果が出せないことも多いけれど、また翌年もチャレンジをすると伺いました。

 

その時、思いました。44歳なんてひよっこだなあって。

 

肺がんになって、自分の人生にちょっと消極的になっていた私の心に、灯がともりました。私から見たら、ものすごいおばあちゃんです。

そのおばあちゃん達が、毎年毎年挑戦し続ける心を持ち続けていることに、本当に感動しました。そして、私も、何歳になっても自分を諦めない挑戦し続ける人間になりたいと思いました。

 

以来、詩吟のお稽古はずっと続けています。